もしアメリカにも中小企業診断士があったら

 もともと日本においても中小企業診断士の知名度はまだまだ低いとされていますが、アメリカではさらに全くと言っていいほど知名度が無いということを以前以下のトピックスでまとめました。それに比べると、弁護士や公認会計士という資格と業務は、日本に限らず海外においても各国ごとにそれぞれの専門性を認められて存在しています。

 この点を掘り下げて考えると、中小企業診断士という資格の課題が見えてくるのではないかと考えて、「もし、アメリカにも中小企業診断士が存在していたらどうなっていたか」ということを少し考察(妄想と言う方が適切かもしれません…)してみました。

中小企業診断士の知名度から言えること

もしアメリカにも中小企業診断士があったら
 個人的には、全体を通じて大きく三つの相違点が生まれると思っており、「①資格試験や資格維持に対するITの活用」、「②州ごとの制度や要件のカスタマイズと地域大学と連携した資格維持・(診断士の)教育環境整備」、「③一定の独占業務を付与」という点が思いつきます。

 ①はアメリカがIT先進国だからというだけでなく、日本の中小企業診断士の資格制度や資格試験、さらにはその後のフォローアップに至るまで、とてもIT化が進んでいるとは言えない状況があります。例えば診断報告書が最終的に紙であることが必須であったり、郵送を好んだりという点は、この資格に限らず日本の慣習的な側面も強いのですが、グローバルな競争の中で生き抜く中小企業を支援する立場の診断士が、あまりにアナログな制度やシステムの中で手続きを行っているのは、非常に残念です。

 ②については、これはアメリカの統治のあり方に依存する部分ですが、大学の役割というものが日本に比べるとより明確にあり、こういった専門資格を所有する資格取得者向けに教育環境を提供することも、おそらくアメリカの大学であれば適用をできるのではないでしょうか。また、③は日本においても議論がされてきた経緯はありますが、職業資格として認める際には、資格を与える政府・国が制度により、独占的に「業務=仕事」を保障することが、(少なくともアメリカであれば)当然のように行われるはずです。

 

 少し細かい点も含めて、アメリカ版中小企業診断士について考えてみたら、このようになります。

もしアメリカにも中小企業診断士があったら…
全体 試験や資格維持に対するITの活用
州ごとにカスタマイズされ、地域の大学を活用した教育環境の準備
一定の独占業務を付与
試験・資格取得 大学の経営講座の単位数を受験資格・要件に加える
資格試験はCBT(Computer-Based Testing:PCを活用した試験)で行われる
申請書類・申し込み・実務補習のレポート等も原則オンライン・PDFで提出
資格維持 定期的に一定のオンライン講座を課す ※USCPA方式
業務 政府が法的に有資格者の役割を定めて、独占業務を与える =業務を保障する
ポータルサイトを通じてコンサルティングに必要なアプリケーションやツールを提供する

 

なぜアメリカには中小企業診断士が必要ないのか?
 こちらで業務や生活をしていて気づくのは、各専門家(弁護士・会計士・税理士)のサービスが非常に豊富であり、アメリカにおける中小企業は、自社でリソースを抱えずにこれらのサービスを利用して経営を行っているケースが多いという印象です。また、日本の中小企業診断士が誕生した経緯の中では、少なくとも大企業と中小企業の違いを埋めるというコンセプトがあり、ある意味では「中小企業を保護・支援しなければならない」という考えが日本にはあります。実際のアメリカの中小企業も大手に比べると当然リスクの塊ではあるのですが、「保護や支援」という考えより、可能性がある企業が投資を受けられるような仕組みを作ることが重要と考えられているのではないでしょうか。

上記は推論にすぎませんが、この考えと、先に述べた「もしアメリカにも中小企業診断士があったら…」を合わせて考えると、どうしてもアメリカにおいては中小企業診断士という資格の必要性が示せず、近い領域の専門資格として既に地位や独占業務を得ているCPA(日本ではUSCPA:米国公認会計士)との棲み分けができないというポイントが浮かび上がります。

 

 

これからの中小企業診断士資格の在り方
 アメリカになぜ中小企業診断士が無いかという問いにより、得られる課題は、現在の中小企業診断士資格そのものが直面している課題であると考えています。実際にこの資格を志している方々や資格取得をされた方々は、中小企業に付加価値を提供したいと心から願っていたり、さらには日本全体や社会への貢献意欲や高い方々が大変多くいらっしゃいます。それにも関わらず、資格を取得しても独占業務(法的な観点から、中小企業診断士だけが行える業務)や、中小企業を支援する為のツールを保障を与えられるわけではありません。

 結果として、ダブルライセンスでなければ独立して開業しても事業として成立しないケースや、個々人の基礎スキルに根差したコンサルティングが一般化してしまい、資格保有者としてのベースとなる(本来同一の資格を持つ者であれば共通かつ均一に保有すべき)コアスキルが乏しく、診断士事の業務内容やスキルのばらつきが非常に大きな資格になってしまっています。

 この状況を解消していく為には、制度として(例えば会社法の中において)中小企業診断士の独占業務が規定され、コアとなる均一化された知識を補充する為の方法をITの活用や大学との連携を含めて再検討することが必要不可欠だと強く思います。

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